月刊 マネジメント・テクノロジ

95年5月15日発行 第3巻 第4号

社長の行動シリーズ
経営ビジョンのマネジメント 最終回
ABC改革



 企業では社長こそがマネージャーです。
マネージャーの仕事の本質は人を動かすことです。自分で動くことではありません。
 
 行動のABCをよく知っていれば、人を攻めることなく、システムを改善することで、人が動かせるようになります。

 経営ビジョンのマネジメントとは、経営ビジョンを実現する行動が強化されるように、会社全体のABCを整備する作業に他ならないのです。


 マネージャーの仕事の基本は、ビジョンを実現する行動や達成を測定し、担当者にフィードバックを与えることです。

 フィードバックは頻繁に行われるほど効果的です。だから、1人のマネージャーがまかなえる担当者の数というのはどうしても限られてきます。
 ですから、社長自らが社員全員のマネージャーになるのは無理な話なのです。

 そこで社長は、管理職などのマネージャーを通して、社員を動かすことになります。そして、このために重要なのが、こうした管理職の人たちのマネジメントなのです。

 残念ながら、ほとんどの場合、管理職は年功序列によって決まっています。会社に長くいれば部下を管理できるはずだ、というあまり根拠のない前提にたった人事が行われているのです。
 ところが、ある仕事に詳しく、経験があるということと、それを人に教えて、やらせるのが上手かどうかということは全く別のことなのです。

 「あいつはもう15年もこの仕事をやっているのだから、そろそろ自覚を持ってリーダーシップを発揮してもらわなければ困る」と個人を責めるよりもっと大事なことがあります。

 その管理職が測定し、フィードバックしなければならない行動や達成が何か見極め、そしてそのポジションに就いた人が、この任務を遂行できるように環境を整備してあげることです。

社長の行動チェックリスト

 まず、ビジョンの達成のためにどんな行動や達成が必要か、そして、ビジョンが達成されているかどうか知るためにどんな情報が必要か知らせましょう。売上げ日報のようにある決められた書式と目標値を決めるといいでしょう。
 さらに、その情報の報告のタイミングを取り決めます(たとえば、毎週月曜日10時までというように)。

報告書の例

         第1営業部週間報告書
                 提出日:95/5/20
               目 標     達 成
    ダイレクトコール    50件      35件
    売上げ         580万      575万

    個人の達成管理   目標   達成 フィードバック
      中 島     20    25        ○
      別 所     18    20        ○
      金 子     18    22     ×

 こうすることで、社長がマネージャーとして、管理職の行動をサポートできます。


管理職をサポートするABC

先行条件(A) 行動(B) 結果(C)
集計報告書の書式 達成を測定し集計する 社長からの誉め言葉(↑)


 報告がなされた時、目標が達成されていないからといって、むやみに叱るのは考えものです。
 報告行動を減らしたり、ウソの報告を増やしたくはないからです。

 達成が思うようになされていないときは、管理職の報告行動を罰するのではなく、一緒に原因を分析し、次のステップを目標に組み込んでいくことが大事です。

 次に、管理職に、同じ様な方法で自分たちの部下をサポートするように教えます。社員数が多ければ、これを何層かに分けることができるでしょう。

 階層の下のレベルの達成を集計していくことで、トップにいる社長には、重要な、まとめられた資料が、問題がどこにあるか一目で分かるような形で収集されるわけです。


 ただ、注意していただきたいのは、測定とフィードバックのピラミッド構造は、部や課など、組織のピラミッド構造がなければ作れないわけではないということです。

 組織の構造と情報伝達の構造とは別物です。

 極端に言えば、行動や達成を測定し、フィードバックするのは、役職に就いた、いわゆる「管理職」である必要はありません。
 平社員でも、あるいは自動化されたコンピュータのソフトにも、ここでマネージャーと定義している「管理職」の仕事はできるのです。

 こうして、社長が中心となり、会社の中に、社長をトップにしたABCのシステムが完成します。
 社員の行動はすべて他の誰かによってサポートされることになります。そして誰かの行動をサポートする行動もまた誰かにサポートされることになります。

 最後に残った問題は難題です。 誰が社長の行動をサポートするのでしょうか?

 測定とフィードバックのピラミッド構造を見れば分かるように、社内で唯一、社長の行動だけが他の誰かによってサポートされていません。

 もちろん、株式を公開している大企業では株主総会などもあり、ある程度ABCが整備されるかもしれません。でも、大抵の中小企業ではそうはいきません。

 中小企業は社長次第、と言われる理由の1つがここにあります。

 それでは、社長の行動のABCを整備するにはどうすればよいのでしょうか?

 1つには、かつてマネジメント・テクノロジでもご紹介したことのある、セルフマネジメントを使うことです。

 セルフマネジメントでは自分で自分の目標を決め、行動や達成を測定し、自分自身へフィードバックします。


社長のセルフフィードバック

先行条件(A) 行動(B) 結果(C)
目標達成集計表の書式 達成を測定し集計する 自分で自分を誉める(↑)

 また、誰か別の人間に、自分のサポートを頼むこともできます。この場合、目標や、具体的な行動を公開し、その人が達成をチェックできるようにしなければなりません。

 「自分だけは自分で責任を持つ」といった 精神主義に走らないこと。他の人の行動をサポートするのにABCを工夫するのと同様に、自分の行動のサポートにもABCを工夫するのです。


社長の行動チェックリスト

社長の行動シリーズ完了。次回からは新しいシリーズがスタートします。乙ご期待!